21.7月のはじめくらい ソフトクリームを求めて歩いた日

1.

部屋のクーラーがカタカタと震えながら冷風を吐き出すのを、おれもまたカタカタと震えながら羽毛布団をかぶって見守っている。

おれの部屋は一階にあるのだけれど、一階には弟の部屋もあって、そちらにはクーラーがついていないのです。だから毎年夏になるとこうして自分の部屋の扉を開けて、弟の部屋に冷気を届けてやる使命を勝手に持ち、なるべく涼しくしてやるために設定温度は20℃にしている。おかげでおれはクーラーがあまり好きではない。あれから出てくる風はどうにも人工的で、心地よさはあるけれども頭が痛くなってしまう。

それでも弟が暑さにやられるよりはマシだろうと思っていたのだけど、最近の弟は自室ではなくリビングで寝ることが多い。特段音の出るような趣味はないし、寝言もおれにはないはずなので、どうしたのかしらんと考えていたら、冷風が部屋まで届いていないのだという。部屋に入れてもらうと確かに涼しくはない。というか生ぬるい。暑くはないのに涼しくもなく、どこから漂ってくるのかカビ臭さすらある。

おれの努力と我慢はなんだったんだろうと少し泣きたくもなるけれど、人生なんて大概がこんなものです。

自分が思い、考え、実行している善意だとか、気遣いなんてものは、大抵の場合相手には届かないし、届いても鬱陶しいものなんです。飲み会でサラダを取り分けることなんて本当は誰も望んでいないのと同じで、だけれど周りがそうするから自分も倣うように、みんな人間ごっこのためにしているだけなんじゃないかな。相手を気遣える自分、人間っぽいもんね。

 

2.

飛蚊症ってあるじゃないですか。視界の端に黒い、蚊のような点が纏わりつくやつ。

実はおれの視界の端にも似たようなものがあって、顕微鏡で見る微生物のような透明度で、なんだかにょろにょろしたものなのだけど、これも飛蚊症らしいですよ。

今まで目にゴミでも入っているのだと思っていたし、常に視界にあるわけではないから気にしていなかったけれど、実は病名のある病気なんですよってわかると、うわっとなりますね。

うわっ、知らなければよかった。知らなければ考えることもなかったのに。知ってしまったから、これからにょろにょろを見るたびに飛蚊症のことを思って生きていくんだ。うわっ、うわー。

と、そんなことがあったのでおすそ分けします。いわゆる啓蒙活動です。いやあ、いいことをしたなあ!