37.11月の終わりくらい 子供に手を振られた日

1.

 近所の話になるんだけれど、ここ一年くらいの間に最寄り駅付近の踏切で4件くらい人身事故が起きている。

 生で見たとかそういうわけではないのだけど、そのどれもが高校生くらいまでの事故で、やっぱり若者が死にやすい街なのかなあと思いました。駅前には病院と薬局が溢れ、スーパーには老人しかおらず、公園では子供の遊び場が隔離され、電車に乗るのも枯れ老人。老人ホームには毎日のように救急車がやってきて誰かを運んでいくし、そりゃあこんな環境にいたら気を違えます、気を違えますよ。都心に出れば山ほどいるピンク髪も金髪もいなくて、白髪混じりの頭しか見えないのだから、少し頭が良ければここはもう終わっていく場所、終の住処が立ち並ぶ場所なんだなって理解できます。

 一度、感傷的な気持ちになって現場に花を持っていったことがあったんですが、すでに供えられた花の横に『人間失格』の文庫がおいてあって、本人が好きだったのかもしれないけれど、そうじゃないなら酷い仕打ちだなあと思って、それ以来花を見るたびに蹴飛ばしたくなる。死んでまで人の心に生きようとするな。おれは人の死なんかものともしない、強い人間になるぞ。

 

2.

 人が死んだあとも脳は少しだけ生きていて、自分が死んだのを知覚できるらしいですよ。

 死んでるのに自分が死んでるのわかるって怖いです。死人に口なし。たぶん死んだあとも嫌なことはたくさんあるんだろうなって思うと憂鬱になります。